ご案内
「ああ、ほんじゃあ、そうしてもらおうかな。もしかして、なにかボルトかナットでも不足するかもしれんから、そのときは、ホームセンタヘ買いにいくで」。
いつもよりかなり早かったけれど、Iさんに留守を任せて、私は出勤した。
この話は、社長には黙っていた。
今のところ、トレーラの荷物を預かることも話していない。
社長は私がどんな借家に住んでいるかを知らないので、話すとそこから説明しなければならず、面倒だと思ったからだ。
「夕食はどうされますか?」私は尋ねた。
「君はいつも、どうしているんだい?自炊かい?」G・K社長は、Iさんのことを「脈がない」と言い切っている。
「関わらん方が良い」とさえ言っているので、なおさら話せなかった。
仕事が終わって、店を出たところで、Iさんに電話をかけたところ、まだ作業をしている「今日は、少し遅いから、コンビ二で弁当でも買って帰るつもりでしたけれど」。
「おお、では、私の分も買ってきてくれ。
申し訳ない。
ちゃんとお金は払うで」そういうわけで弁当を二つ買って帰った。
人の弁当を選ぶのは、なかなか難しいものだ。
一応、一番立派そうなトンカツ弁当にした。
自分は唐揚げ弁当でグレードに若干差をつけてみた。
このほか、お茶や、カップの味噌汁も購入していった。
暗い森林の中に、明かりが埋々と灯る我が家があった。
普段、こんな光景を見ることはない。
つまり、私が部屋に入らないかぎり室内の照明は灯らないからだ。
SさんとYさんが同居していたことがあったが、あのとき以来のことである。
車から降りると、奇妙な音が聞こえた。
があがあというのか、ごうごうというのか、聞いたことのない音だ。
玄関のドアを開けて入ると、その音が一気に大きくなった。
そして、私は立ちつくしてしまったのだ。
左から右へ、私のすぐ前を通り過ぎるものがある。
そこに、Iさんの笑顔があった。
今はもう右手へ行き、急カーブをゆっくりと回っている。
二階へ上がる急な坂道の手前だ。
そこにあるのは、ジェットコースターだった。
普通のものよりもずっと小さい。
パイプで組まれたレールに二両だけのコースターー。
二階の手摺りの上から、滑り台のように左へ下がり、もの凄い急カーブを繰り返すコースができていた。
「よう、おかえり」Iさんが明るい声で言った。
小さなコースターの後ろの車両に乗っている。
もう完全に停止していた。
そこが終点のようだ。
「凄いですね」それしか言えなかった。
「いやぁ、これ、作られたんですか?」「組み立て式なんだわな。
いろいろなコースが組めるようになっとる。
半日もあれば、コースを組み替えることもできるでな」。
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